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大阪高等裁判所 平成12年(ネ)631号 判決 2000年9月28日

控訴人 A野太郎

控訴人 大東京火災海上保険株式会社

右代表者代表取締役 瀨下明

控訴人両名訴訟代理人弁護士 木下芳宣

同 岡嗣人

被控訴人 株式会社ユニオンホテル

右代表者代表取締役 森本一夫

右訴訟代理人弁護士 岡本耕二

主文

一  原判決を次のとおり変更する。

1  被控訴人は、控訴人A野太郎に対し、一二万二〇〇〇円及びこれに対する平成一一年三月一〇日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。

2  被控訴人は、控訴人大東京火災海上保険株式会社に対し、四〇五万円及びこれに対する平成一一年三月一〇日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。

3  控訴人らのその余の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

三  この判決は、第一項1及び2に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一申立て

一  控訴人ら

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人は、控訴人A野太郎に対し、一七万二〇〇〇円及び内金一二万二〇〇〇円に対する平成一一年三月一〇日から、内金五万円に対する同年四月九日から各支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。

3  被控訴人は、控訴人大東京火災海上保険株式会社に対し、四五五万円及び内金四〇五万円に対する平成一一年三月一〇日から、内金五〇万円に対する同年四月九日から各支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。

4  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

5  仮執行宣言

二  被控訴人

1  本件控訴を棄却する。

2  控訴費用は控訴人らの負担とする。

第二主張

原判決記載のとおりであるから、これを引用する(ただし、二丁裏九行目の「原告所有」を「同控訴人所有」と、三丁裏八行目の「盗難された」を「盗難にあった」と、それぞれ改める)。

第三証拠《省略》

第四判断

一  原判決八丁裏四行目から九丁裏四行目までを次のとおり改めるほか、原判決理由説示のとおりであるから、これを引用する(ただし、七丁表七行目の「ユニオン会員」を「ユニオンクラブ会員」と改める)。

「2 右事実によると、控訴人A野は、自らはホテルの自室に戻ることから、被控訴人において本件自動車をホテルの敷地内で移動させることを了承し、その鍵を従業員に交付することにより、被控訴人に対してその保管を委託し、被控訴人はこれを承諾したのであるから、被控訴人は、ホテルの営業の範囲内において、無償で同控訴人から本件自動車の寄託を受けたというべきであり、同控訴人が被控訴人(フロント係の田所)に対して交付した鍵がスペアキーであり、同控訴人がマスターキーは自己のもとに所持していたこと、被控訴人(田所)において短時間だけ鍵を預かる意図であったことは、いずれも右認定を左右するものではない。

そして、被控訴人は、本件自動車の滅失(盗難)について、不可抗力を主張・立証しないから、被控訴人は、商法五九三条、五九四条により、同控訴人に対して右盗難により生じた損害を賠償する責に任じるというべきである。

なお、本件自動車が商法五九五条にいう高価品に該当するとしても、田所は、控訴人A野の運転する本件自動車を駐車場からホテルの正面まで誘導したのであり、被控訴人は本件自動車の車種や概ねの価額を知ったというべきであるから、被控訴人は同条によりその責を免れることはできないというべきである。

3 《証拠省略》によると、請求原因4(控訴人A野の損害)及び同5(控訴人大東京火災海上保険株式会社の求償債権)の各事業を認めることができ、同6の事実(催告)は、当事者間に争いがない(請求原因4の(2)記載の動産は、その種類・価額からみて、通常自動車に積載されていると考えられる物品であるから、その滅失についても被控訴人は前記責任を負う)。

控訴人らの本訴請求は商法五九四条に基づくものであるところ、控訴人らが本件訴訟の提起及び遂行のために支弁した弁護士費用は、同条が場屋の経営者に特に課した責任に基づく損害ということはできない。

また、被控訴人において、駐車場に前記の「免責の告示」を掲示してあったとしても、これにより本件自動車の盗難について免責を主張することはできず(商法五九四条三項)、右掲示の事実をもって、過失相殺の法理を適用して本件の損害の一部を控訴人A野に負担させる事由とはなり得ない。

4 右の次第で、控訴人らの本訴請求は、控訴人A野について右損害のうち一二万二〇〇〇円、同大東京火災海上保険株式会社について同じく四〇五万円並びにこれらに対する前記催告期限の翌日である平成一一年三月一〇日から支払済みまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の各支払を求める限度において理由があり、これを認容すべきであるが、その余は失当として棄却すべきものである。」

二  よって、右結論を異にする原判決を変更することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 妹尾圭策 裁判官 渡邊雅文 菊池徹)

<以下省略>

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